こんにちは、Dr.Kです。
コロナを防ぐために大切なこと
第5回目は「免疫力」について
普段の生活の中で聞かれるようになった
「免疫力」という言葉。
免疫学の教授の中には、
測定して比較できる単位も無い様なモノに
「◯◯力」という言い方をすべきでは無い
と主張される方もいます。
とは言え、
多くの方は違和感も無いでしょうから、
感染しない様に免疫応答を行う強さ
として「免疫力」と言う単語を使います。
免疫機能は体のどこにある?
ところで、免疫という機能は
身体のどこで行われているか知っていますか?
血管内
リンパ管内
リンパ節
脾臓
などなど思い浮かんだのではないでしょうか?
どれも正解!です。しかし全身に万遍なく
免疫組織が分布している訳ではありません。
免疫力UPには腸の周りが大事
実は「腸」やその周辺組織が免疫力に重要
ということが、
最近の研究で分かってきています。
なぜそんなに腸に?
免疫機能が集中しているのか。
本当の理由は誰にもわかりません!が、
研究結果をもとにした説明では、
病原菌やウイルスなどが常に入り込む
危険性のある場所
体内で最も密接に「外界」と接する臓器
であると言えます。
だからこそ腸には、
頼もしい「免疫細胞」が集結している
と考えられています。
なんと体中の免疫細胞のおよそ7割が
腸の栄養や水分を吸収する粘膜のすぐ内側に
密集して外敵の侵入に備えているのです。
更に腸には全身から集結した免疫細胞の
「戦闘力」を高めるための「訓練場」が
用意されていることが分かっています。
小腸の壁の一部に存在する
「パイエル板」と呼ばれる平らな部分です。
パイエル板には様々な細菌やウイルス、
食物のかけらなどの「異物」を、
体内に引き入れるための「入り口」が存在し、
引き込んだ「異物」をパイエル板内に密集する
大量の免疫細胞に触れさせ、有害で攻撃すべき
対象の特徴を学習させているのです。
訓練を受けた免疫細胞は
血流に乗って全身にも運ばれ、
体の各所で敵を見つけ攻撃する「兵士」
となって働くことになります。
ですから「インフルエンザ」や「肺炎」、
「COVID-19」などに対する免疫力も、
腸での訓練と密接に関係しているらしい
ということが分かりつつあります。
例えて言えば腸は
「全身の免疫力の統合幕僚監部」
と言えるでしょう。
ところが!
体を守るよう訓練されているはずの免疫細胞が
「暴走」する異常が現代人の間に急増。
これが「アレルギー」や「自己免疫疾患」です
花粉症もその一種ですね。
最新の研究によって、
こうした免疫の暴走を招く病気の患者さんには
「腸内細菌の異常」が生じていることが
分かってきています。
人間の腸内にいる腸内細菌は約1000種類、
個数にして100兆個以上と言われています。
その中で重度のアレルギーと
自己免疫疾患のひとつ多発性硬化症の患者に
共通していつのが「クロストリジウム菌」。
この「クロストリジウム菌」が
極端に減っているという研究結果も
報告されています。
クロストリジウム属には
約100種類の細菌が特定されていますが、
その中でも、
特定の種類が極端に減少していることが
「免疫暴走」と深く関わっている可能性が
高いと言うことです。
クロストリジウム菌の腸内での役割について、
大阪大学特任教授の坂口志文氏が発見した
「Tレグ(制御性T細胞)」が
大きく関わっていることも分かっています。
Tレグは全身で過剰に活性化し
暴走している免疫細胞をなだめてアレルギーや
自己免疫疾患を抑える「ブレーキ役」である
ということが分かったのです。
そしてTレグがクロストリジウム菌の働きで
作り出されていることも分かってきています。
クロストリジウム菌は「食物繊維」を代謝し
「酪酸」と呼ばれる短鎖飽和脂肪酸を生成
するのですが、
少しわかりづらいかも知れないので、
どのような経路になっているのか
順を追ってみてみましょう。
腸内細菌の内のひとつ
「クロストリジウム菌」が
➡ 食物繊維を代謝
➡ 酪酸を生成
この酪酸が
➡ 腸の内側にいる免疫細胞に受け取られる
➡ Tレグへと変化、
➡ 周囲に抑制的なメッセージを発信
という構図です。
その逆を辿ると・・・
クロストリジウム菌が減れば
➡ 酪酸が少なくなる
➡ Tレグも減少する
➡ 重症のアレルギーや自己免疫疾患を発症
先ほどとは逆の構図になる。
ではTレグを体内で増やすことができれば
素晴らしいですよね。
Tレグ体内で増やしたい!
理化学研究所の大野博司氏が発表した研究で
食物繊維を多く食べるほど「酪酸」を放出し
多くのTレグを生み出す
ことが分かっています。
食物繊維と言えば、
便通をよくする効果がよく知られていますが、
日本人は古くから木の実やキノコから
食物繊維をとってきたと考えられます。
海藻や根菜なども食物繊維がたっぷり!
だから日本人の腸内には、
食物繊維を好む「クロストリジウム菌」などの
菌種が多く住み着くようになった。。。
と考えられています。
実際に海藻を分解出来る菌は
日本人に特有であると知られています。
腸内環境の改善には「発酵食品」も
よく注目されていますが、
実は発酵食品以外にも
「食物繊維」がとても重要なんですね。
かと言って一度に大量に食べても
すぐにTレグが増えるわけではありません。
継続して定期的に
適量の食物繊維を摂ることが
➡ クロストリジウム菌などを増やし
➡ 酪酸を増やし
➡ Tレグを誘導して
➡ 免疫暴走を食い止めるのです。
プロバイオティクスと言われる
「善玉腸内細菌」をサプリメントで摂取したり
発酵食品を摂ることももちろん!
腸内環境の改善や免疫力UPに有用ですが、
実は免疫力向上のためには「食物繊維」も重要
とういことが、お分かり頂けたでしょうか。
「野菜」「海藻」「キノコ類」「果物」などを
うまく活用して、普段の食生活の中で
食物繊維を摂るようにしていきましょう。
毎日の食事内容を意識していくと、
あなたの免疫力も自然とUPしていきますよ。
変えていきます。出来ることから1つずつ
やっていきましょう。